たまごな地下部屋

今日も暑いなあ、なんて、空を仰いで。



指で作ったカメラを覗けば、葉っぱのシャッター音と共に、綺麗な青空が切り取れた。

そろそろ、古時計の９回目の鐘が鳴ろうとする頃。

綺麗な青空には不釣合いな程真っ黒い、とある店では、
今日も数少ない客を迎えるために、店の暗幕を退けていた。



「･･･カオスちゃん」

「お、久しぶりー。死んでなくてよかった」

「別に･･･そんなひょいひょい死なないよ」



右手を軽く挙げながら、だるそうに山を下る影が見えた。

店の店主―――カオスは、その声の主に、微笑いながら声をかける。

声の主は、そんな様子に照れているのか、頭を掻きながらこちらへ来た。



かれこれ一ヶ月ぶりになろう会話は、弾んだ、とはお世辞にも言い難いが、二人には十分だった。



＋＋＋



場所は、変わって店の中。



「どうしたの？またこんな暑い日に」



今日はよりによっての暑い日。

ラジオでも『今年の夏最大級～』だなんて、下劣な一般市民が騒いでた。



「んー･･･気が向いただけだよ」



そう言って、青いシロップをかけたかき氷を頬張る。

がりがり、と鳴る音は、暑さで少しぼーっとしてる頭に、何だか心地よかった。

口に運んではシロップをかけ、また運んではシロップを、と、妙なサイクルを繰り返しながら、言う。



「なんかやることも特にないしさ。山下りてきたら涼しいかと思って」

見事だよ、シロップをかけながら、そう付け加えた。

まあ店たるもの、お客様を満足させることが第一ですから。



「･･･で、しず。来てくれたってことは、手伝ってくれるわけ？」

「まあね。僕、従業員だし」



がちゃん、と、陶器にスプーンを突っ込む音がしたかと思うと、しずはもう立ち上がっていた。

あたしに、食器洗ったら棚整理するとだけ言うと、音も立てずにに台所まで歩いていく。



「あ、そうだ」



不意に、しずが、楽しそうな声で言った。



「今日は休みなよ。年中無休って謳ったって、君も人なんだから」

「えっ･･･と、でもほら、しず、店のあれこれ、分かんないでしょ？」

「仮にも一年働いてるんだし、まあ表面くらいならどうにかなるよ」

「そ、そうだ、店のあちこちに盗難防止のための爆破スイッチあるし！」

「大丈夫、爆発くらいじゃ死なないから」



バン、と机を叩いて脅してみたものの、しずはあっさりとそう言ってのけた。

･･･冗談なんだけどなあ。



「ね、本当に大丈夫だって。今日は何屋？」

「いいの？任せちゃうよ？･･･八百屋、八百屋ね」

「了解」



しずがそう言うや否や、ポン、と背中を押した。



「ゆっくりお休み。一日くらいバレやしないよ」

「･･･ボーナス出しちゃう」

「ん、ありがと」



そして、それを最後に、あたしは、徐々に消える雑音と共に、夢の中へと姿を消した。



＋＋＋



さっきから隣で寝息を立てている、僕のただ一人の陽気な上司。

吐き出される一つ一つが今までの頑張りのようで、僕は一言「お疲れ様」と声をかけた。

聞こえているのかは分からないが、別に、そんな言葉、―――届く必要もない。



がらん。



ドアのタイヤが転がる音が、静かな部屋に響き渡る。

ようやくとも言えようか、今日始めてのお客様だ。



「いらっしゃいませ、”万屋カオス”です」



万屋カオスの休日は、まだ始まったばかり。

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屋根裏部屋の一周年を祝って。

実は裏設定で、万屋には従業員いるんですよ。１人だけね。

裏設定っていうかもう公認なんですけど、

本編にはなんか出せなかったんで。HAHAHA

まあこんな形だけども、出せたんでよかったですよ。

ちなみに、お客さんっていうのはツンデレラだよ、っていう裏設定あり。

･･･設定作ったのに、なんか書くの面倒で書きませんでした。（てへっ



カオスちゃんのとこの一周年の小説が花言葉使ってたんで、

これはいいやと使わせてもらいました。ごめんね！（

ステファノティスって花の花言葉が「傾聴する」だったんで、

聴覚的効果を多めに取り入れてみたり。

･･･僕にとっての、だけども。（

後、ニガヨモギ・ハルシャギクの花言葉で、今回の主役も決めましたし。

ニガヨモギが「冗談・からかい・平和」で、

ハルシャギクが「上機嫌・陽気・常に快活・清い心」ですと。

多少あってない点はそっとしといてやって下さい。



一周年なのでフリーです。

よかったら持ってってやって下さい。

持っていくときは連絡下さいな。



修正しました（8/10）