サイド/ナレーター
相変わらず、扉の向こうはざわついている。
嫁探しの効果なのか、黄色い声が大半を占めているようだ。
・・・何だか悲鳴に聞こえなくもないけれど。
「・・・・・・・・・・・・」
開けたくないなあ。
ダリはひしひしと、そう思っていた。
そして隣に、そんな王子を冷たい目で見つめる部下、パンパが、呆れた様子で言う。
「何ぐずぐずしてるんですか。入りますよ」
「分かったよ・・・」
ギィィィィィ・・・・・・
ドアノブを握り、時間を惜しむように、それはもうゆっくりと、扉を開ける。
そこは―――
第14話
「憂鬱な私に逃げ場を下さいってさっき願ったばかりなのに」
~え、待って後ろで睨んでってちょ、パンパやめっ~
「憂鬱な私に逃げ場を下さいってさっき願ったばかりなのに」
~え、待って後ろで睨んでってちょ、パンパやめっ~
「もうすぐですからねー」
笑顔で運転席に座るのは、もちろん師匠のパディ、ではなくピピン。
その隣の助手席にはパディが、堂々と陣取っていた。
「ふっふっふ、ピピンって運転上手いでしょ?
私が師匠だからね。ほら、どう、ツンデレラも私の弟子にならないかい?」
「なめたこと言ってると車から引き摺り下ろすぞ似非魔法使いが。
・・・あれ?ピピンって若そうだけど・・・免許持ってるの?」
「免許?何ですかそれ?」
後ろを振り返りながら尋ねるピピン。
どうやら、本当に知らないようだ。
「あーピピン、免許ってのはあれだよあれ、運転する許可みたいなのね。
それがないと警s・・・やつらに目ェつけられるのだよ」
「師匠!だからこの間やつらに追われてたんですか私たち!!」
「大丈夫、私たちは悪くない。悪いのはやつらなんだから」
「いや思いっきりあんたら悪いでしょうが!!」
っていうかやめて!純粋なピピンに悪を刷り込むのはやめて!!
セミは今、本当にそう懇願していた。
「え、じゃあ結局・・・」
「ピピン、落ち着いて考えて欲しい。
他人に与えられた称号なんて、所詮、枠の中のものに過ぎないのだよ?」
「し、師匠・・・!」
「ちょまっ嫌っ怖いってこの車乗ってたくない降ろして―――ッ!!」
夜に映える赤い車は、いっそうスピードを増して、物語の舞台へと向かっていく。
「そこの豚のしょうが焼き!ほらそれ!ねー取ってってばー!」
「うっさい今あたしがチキン取ってんだから待ちなさいよ!」
「ちょ、おまっそこ邪魔!腕退けろっつに俺のステーキが汚れるだろ!」
広い部屋。
そのど真ん中を陣取っている大きなテーブルの前で、どこかの三姉妹が争っていた。
「だって和夫だって食べたいんだもーん」
和夫が、フォークを持て余しながら文句を言った。
それにカチンと来たのか、カチューンも負けじと言い返す。
「あんたが小さいから届かないんでしょ!?自業自得よ!」
「なッ!違うもんテーブルが異常に高いだけだもん!!」
「あたしは届きますー。ほらほら、しょうが焼きだって楽々!」
「うわあああああカチューンのドケチー!!」
延々と言い争いを続ける妹達の隣で、ツナが一人、体を震わせていた。
それはもう、遠目から見ても分かるくらいに。
「うっさいあんたが悪いんでしょ!いっつもお弁当残すから!」
「何なの!?カチューンだってふりかけいっつも食べないじゃん!!」
「ふりかけと弁当は話が別でし―――危なッ!」
カチューンが振り返る先に、怒りをあらわにしたツナがいた。
咄嗟に和夫の体を引き寄せ、二人して下に伏せる。
その上を、ステーキを載せた皿が空を切って通り過ぎていった。
・・・しかし、当の本人は気づいてないらしく、加速していくばかりだ。
「あ、ツナだ!こっちに来てる!」
少し離れたところにある壁から、一人の少女が出てきた。
どうやら、今までの様子を影から見ていたようだ。
ツナがこちらにものすごい速さで近づいてくるのを、嬉しそうに見つめている。
・・・ツナの形相には気づいていないらしい。
「本当にツナだー!うっわどうしよどうしよっかn
「うっさい場をわきまえろ!!!」
どごっ。
妹達に向けられた強烈な言葉と右ストレートが、少女に刺さった。
周りから悲鳴が上がる。
そりゃそうだろう。はたから見れば殺人事件に見えなくもない。
「ねえ、あの子、八百屋の娘さんじゃ・・・ナスちゃんって子・・・」
「ストーカー疑惑で・・・」
「あの家の子を・・・・・・してて・・・」
「ふー、ナス助かるわあ」
「うんうん。いいタイミングいいタイミング」
妹二人はと言うと、少女―――ナスの介入をひどく喜んでいるようだった。
自分達に向けられた拳(という名の刃)を、進んで自ら受けてくれたのだから。
「おー。・・・ん?あ、ナスか。うーん・・・まあ大丈夫か」
「大丈夫でしょ、まあナスだし」
「ナスの自業自得だもんね!ぴくぴくしてるし大丈夫だよ」
当事者のツナはというと、さほど気にしてないようだ。
・・・どうやらよくあることらしい。
そして、そんなざわついた空気の中。
ギィィィィィ・・・・・・
パーティの主役が、入ってきた。
遅くなりました。14話です。
それの言い訳といわんばかりに、今回は長めです。
新キャラ登場っぽいですが、メインキャラではありません。
キャラクター紹介を見ていただいたら、ちらっと触れてるんですが・・・
八百屋の少女です。
多分出番これだけです。早い!
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ナスだこりゃ驚いた!!
2次元でも3次元でもナスってウザいn。。。
あの3姉妹口調で誰だかすぐにわかっちゃうねぇ