サイド/ナレーター
「すいません、今の状況を教えていただけませんか?」
相手は、尋ねられていることに気づいているのかいないのか、なかなか反応を返さない。
ただ、ぼうっと立っているだけだ。
・・・考えが読めない。
そう。
「いや、この場にいなかったもので・・・」
そこに立っていたのは、
普段のスネアをタッパーに持ち替えて立っている、お義母さんだったのだ。
第16話
「だってタッパー取りに行ってたんだもの」
~節約っていうのはこういうところでするものなのよ~
「だってタッパー取りに行ってたんだもの」
~節約っていうのはこういうところでするものなのよ~
「ぐっわあああああちくしょー!何なのもうー!!」
「えへへへへー!楽しいねー!!」
お城のロビー。
受付前で、セミは今、とんだ苦難に立ち向かっていた。
***
時間は巻き戻って10分前。
「さーて、これからどうしようかな・・・」
と、呟いてみるものの、行く場所は決まっているのだが。
セミは、入口らしき扉を通り抜け、中に入った。
ピピンは最後の最後までしっかり者だった。
入口から最短距離、と言っても過言じゃない所に車を止めてくれていたのだ。
・・・実際には「私が指示したのだよ」とかほざく人がいるんだろうけど。
中は綺麗だった。
そして明るい。
暗闇ですっかり慣れていた目をこじ開けて、受付らしき所へ歩いていく。
受付には、机で一生懸命何かを書いている人がいた。
「あ、あのー・・・」
「え、あ、は、はい!何!?」
「え、いや、パーティとやらに来たんだけ・・・ど・・・」
「あ、お客さん!」
それ以外に何が有り得るのだろう。
「了解しましたっ。ちょっと待っ、今名簿出すんで!
・・・あ。このこと、王子にはいいけど、側近の方だけには絶っっ対言わないで!」
「は、はあ・・・」
王子、相当なめられてんな。
セミはもう、パーティに出る意味を見失いかけていた。
「っと。はいどーぞっ!」
「あ。どーm・・・」
差し出された大学ノートを見て、セミは思わず絶句した。
・・・ポン。ポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン。
大学ノートの四隅は、全てこの2文字で埋まっていた。
「ねー!すごいでしょー?
これ、ぜーんぶあたしが書いたんだよー!!」
ああ、相当暇だったんだな。
即座に悟った。
「あのねー!ポンっていうのはここにたまーに来るお外の役人さんでー!でね!・・・」
そのまま延々と喋り続けているのを横目に、とりあえず書き始めてみる。
・・・名前。住所。電話番号。王子をどう思うか。自分の萌えポイントはどこか。
まず3つの項目を埋め、4つ目、5つ目とは触れなかった。
書き終えた後もポン閣下とやらの魅力を語り続けている受付に、
名簿を書き終えたことを報告した。
受付の人は「ありがとうございます」と受け取った後、
さあ案内してくれるのかと思ったら。
「さ、ここで抜き打ちテストー!!」
「へっ・・・は、何!?」
「お姉さん、あなたには、地獄から生還してきてもらいます!」
え、なんかすごいことになってきた・・・?
戸惑いつつも、「はあ・・・」と返事を返す。
「・・・で、地獄って?」
おお、案外冷静な自分に乾杯。
そう思ってみるも、やっぱり不安だ。
「あ、いや、そんなに硬くならないで大丈夫だよ!
でも真剣にやってね!!」
どっちだ。
「えへへへへー、題して、 ”じゃんけんポン” !!」
ねーポンって入ってるんだよー!と、嬉しそうな受付とは別に、
セミはかなり気抜けしていた。
・・・じゃんけんかよ!!
「あ、でもじゃんけんだからってなめないでよー?
あたし相当強いからね?
・・・じゃ、時間ないし、すぐやろー!」
早く早く、と受付にせがまれて、渋々じゃんけんをするセミ。
「じゃーんけーんポン!!」
受付の掛け声と共に、それぞれ手を出す。
セミがグー、受付がパー。
・・・まだ一回目だもん。
セミは、自分自身に語りかけていた。
「あ、もう一回だねー。はい、じゃーんけーんポン!!」
セミがチョキ。受付がグー。
・・・まだまだ。
「じゃーんけーんポン!!」
セミがグー、受付がパー。
・・・ま、まだ3回目だもん。
「じゃーんけーんポン!!」
セミがパー、受付がチョキ。
「じゃーんけーんポン!!」
「じゃーんけーん」
「じゃーん」
「じゃ」
・・・・・・・・・・・・。
ロビーに響き渡る声は、いつの間にか2つになっていた。
新キャラ登場です。
ポン閣下大好き、分かる人には分かります。
ただポン閣下出しちゃってよかったのかが問題なんだけど(わー
にしてもあれですね。
同時進行ってだるいですね。(帰れ
PR
トラックバック
トラックバックURL: