サイド/パンパ
「「失礼しまーす」」
ミッチーとラティの声が、部屋に響き渡りました。
ようやくいらっしゃったようです。
まず、お二人は部屋を見渡して、それから、引きつった笑みで私を見てきました。
「ミッチぃいぃいいいぃい、ラティいぃぃいぃいぃいい」
ぐちゃぐちゃの汚い顔をさせながら、王子はお二人に絡んでいっています。
王子、気持ち悪いです。
どうやらお二人もそう思ったらしく、無視を決め込んでいました。
「お二人とも、こちらです」
私は、笑顔を浮かべながらお二人を招きます。
何故だかビクビクした様子でしたが、お二人はこちらへ来ました。
第28話
「だから私を無視しないでくれぇええぇええぇえぇぇえ!!」
~え、いやっちょ、うわっ王子キモッ!~
「だから私を無視しないでくれぇええぇええぇえぇぇえ!!」
~え、いやっちょ、うわっ王子キモッ!~
「お二人には、これの持ち主を探していただきたいんです」
私はそう言って、穴の開いたペットボトルを差し出しました。
・・・あちらこちらに血痕が付いているのを見たからでしょうか、お二人の顔が少し青褪めています。
「あの、これってただのペットボトルですよね?
なんでこんなんわざわざ探して返す必要が・・・?」
「王子が五月蝿いんで」
ミッチーの問いに、王子を見やりながら答えます。
お二人もその視線を追ったのですが、その先に王子がいたからでしょうか、さっと顔を翻していました。
「パンパさーん!あたし、これの持ち主知ってますよー!」
「そうですか。それはよかった」
ラティが、如何にもお手柄だという風に嬉しそうに言いました。
まあ別に悪いことではないですし、とりあえず普通に返しておきますか。
とは言うものの、非常に都合が悪い。
なんて事でしょう、せっかく時間を稼いでもらおうと思ったのに・・・。
「えへへ!では早速行って参ります!ね、ミッチー!」
「そうやね・・・はい、早く済ませてきます」
「宜しくお願いします」
さて、どうしましょう。
私は、外に出て行こうとするミッチーを呼び止めました。
「30分と少し、道に迷ってきて下さい」
「ええですけど・・・何で?」
「シンデレラ、って童話、知ってます?
あの話によると、持ち主は知ってるものじゃなく、探すものだそうでして」
「・・・パンパさん、素直じゃないなあ」
ミッチーは、笑いながらそう言うと、了解しました、と言って出て行きました。
王子は、相変わらず泣きっぱなしでした。
「・・・ぼさっとしないで下さい、王子」
「え?」
涙でぐしょぐしょになった顔を上げて、王子は間抜けた声を出しました。
「そんな格好で彼女に会いに行かれるつもりですか?
・・・幻滅されるのがオチですよ」
そう言いながら、私は改めて王子の格好を見ました。
重力をも跳ね返した髪の毛。
涙で腫れた目。
泣いたためなのか、鼻の頭は赤いし、鼻水も拭いていません。
しかも、寝起きなのでもちろん寝巻き。
王子は、自分の格好を食い入るように見つめ、それから、
「着替えないと!」
と、洗面台に走っていきました。
まるで、どこかの子供みたいです。
・・・昔から、貴方は変わりませんね。
30分後、満足そうな笑顔で王子が戻ってきました。
そろそろ出かけるのだろう、そう思い、壁にかけてあったスーツに手を伸ばしました。
「パンパ」
右手をスーツに通したとき、王子が口を開きました。
「ありがとう」
「・・・別に」
「別に、いつまでもあそこでいつまでもウジウジされてても困っただけです。
礼には及びません」
そうとだけ言って、私は残りの左手もスーツに通しました。
そして王子は、しばらく黙り込んだかと思うと、やがて口を開きました。
「本当、昔と変わってないよな、パンパ」
「王子ほどじゃないですよ」
私は、ボタンを留めながら、微笑んで言います。
王子は、そんな私を見て、
「ま、そうかもなあ」
と、やはり昔と変わらない笑顔で答えるのでした。
パンパ視点、難しかったです。
この話なら漫画描きたい。描かないけどね!
王子と二人の辺りは、何回かざかざか描いてみたんですけどね。
んー。
ツンデレラは 人情物語 だよ (まさか
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