ピンポーン。
インターホンが、軽快な音を立てて来客を知らせている。
あたしは、たたみかけの洗濯物を床に置いてから、急いで扉へ向かった。
「はい、どちら様で…………え、」
「やあツンデレラ!久し振りだね!」
顔を上げると、そこには、三日か四日ぶりに見る、
アイツ―――誰もが知っているこの国の王子、ダリの顔があった。
驚きのあまり一瞬顔が綻びたが、素直に喜ぶなんて癪に障る。
あたしは、口をタコみたいに尖らせて、王子を睨んだ。
「久しぶりって何よ。
別に、アンタと三日四日会わないくらい、なんてことないんだから!」
「でも私は辛かった!君に会いたかったんだよ!」
「ちょっ…………やめ、鼻血出てきてるじゃない!付くから!」
「うーん…………つれないなあ」
そして、それっきり、王子はあたしに抱き付くのをやめた。
最近、王子は控え目になったと思う。
初めて会った時―――一年と少し前は、会う度鼻血を噴き出したりして、まるで変態だった。
いや、まあ今も変態には変わりないんだけど。
でも、仕事が忙しくなったのか、いい加減大人になったのか、それとも、…………。
とにかく、先月から家に来る回数がめっきり減った。
「じゃ、私はそろそろ失礼するかな」
「え、…………何よ、家、あがっていくんじゃないの?」
私は、王子がてっきり家に来るものだと思っていたから、思わぬ返答に拍子抜けしてしまった。
王子はというと、一瞬、にやっと笑ってから、少し顔を引き締めた。
「そうしたい気持ちは山々なんだが、生憎、午後から仕事が入っていてね…………」
「…………へ、あ、ああ、そう?いや別に、来てほしいわけじゃないの、うん。
ご飯、アンタの分、作んなくていいし?
うん、別にいいわよ、楽だし。気にしてない」
相変わらず、嘘吐きな私の口。
…………本当は、いつひょっこり現れるかわからないアンタの分も、
お昼ご飯、…………多めに作ってたんだけどなぁ。
でも王子は、そんな事を知るはずもなく。
「それならよかった。
多分、またしばらく顔も出せないだろうしね。
…………お、もうこんな時間か。
じゃ、そろそろお暇させていただくよ。
働き過ぎで倒れないようにね、ツンデレラ」
「…………アンタもね」
「ん?何か言ったかい?」
こいつは、どうやら正真正銘の馬鹿らしい。
私は、王子の襟元を引っ張って、耳元で思い切り叫んでやった。
「何も言ってないっこの馬鹿!
もう、早く仕事に行きなさいよ!
だからいつもパンパさんに怒られるのよッ」
「お、おお?わかったよ、行ってくる」
「…………じゃ、ね」
バタン!
そのまま私は、王子の見送りもせずに、玄関の扉を閉めた。
……………………はぁ。
―――
続きません。
冒頭部分が書けただけでも幸せ!
いやあ、小説ブームいいねえ。
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そして、それから五日が経った。
「パーンパっ!英会話の授業、終わったぞ!
早くやろう!」
「またですか?
それに王子、後五分後には生物の授業が・・・」
「五分あったら一回できる!
いいじゃないか、ちょっとくらい休憩したって」
「・・・・・・分かりました、一回だけですからね」
遅刻したら宿題増やしてもらいますよ。
私がそう言うと、分かってるって、と王子が急かす。
これが、いつも通りになりつつある日常。
「母様、私、―――ダリ王子には、仕えたくない」
口をポカンと開けた母様を見て、私はきっぱりと言い放った。
・・・変な顔。
だなんて思っている間に、母様の間抜け顔はみるみるうちに赤くなっていた。
「こ、こらっ!ああ何言って、すいませんすいません、
ほら!あんたも頭下げなさい!」
必死で笑いを堪える私の頭を下げようと、母様はすごい力で頭を押さえてくる。
だが、こっちだって、そう簡単に頭は下げられない。
そうこうしているうちに、王子の隣に居た猫背のお爺さんが、大声で怒鳴った。
「・・・ええい!もういい!
王子、こんな無礼者、今すぐ―――」
「よし、採用」
そして、そんな中、予想外の台詞を吐いたのは、かの王子だった。
「ダリ、10歳の誕生日おめでとう」
「わあ!母さん、父さん、ありがとう!」
「ブフッ!だ、ダリ、お前の笑顔は最高すぎるぞ」
「もう貴方ってば!また鼻血出して・・・」
「父さん・・・大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だよ、それよりダリ、プレゼントがあるんだ。」
「やったぁ!今年は何なの?」
「今年の誕生日プレゼントは―――」